草にまぎれて白色のかたまりが
ちらちらと目に入る。
やっぱり、山羊がいる。
誰か気付いているのだろうか。
誰も気付いていないのだろうか。
ヤギの声を聞きながら朝食の準備。
本当にヤギだろうか。
聞こえているのは私だけだろうか。
遠くにヤギの声がする。
近くにヤギの声がする。
寂しそうな声で鳴いている。
不安そうな声で鳴いている。
朝の風景も、人の動きも、車の動きも
いつもと変わらない。
けれど、その日は、山羊がいる。
彼と二人でヤギがどうなったか気になって一日を過ごし、
そしてそのまま夕方になった。
あのヤギは幻だったかもしれないと思い込んでいたら
メエーと声がする。
まだ私の近くにヤギがいる。
けれど姿は見えない。
朝の鳴き声よりも、より弱く、より遠くへ響く。
次の日、もう山羊は鳴かない。
いつもの朝、いつもの人、いつもの風景。
ヤギは飼い主が迎えにきたのか、
もう姿もない。
もう鳴かない。
山羊の声を、初めて近くで聞いた。
山羊の一部を、初めて少し離れて見た。
白く、寂しい声だった。
夏の空にかかる雲のような
優しい、真っ白な声だった。

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